元警察本部警察官が教えます!

元警察本部警察官の管理人が警察についてあれこれ書いています。他にも法律、裁判、福祉等についても少々!

鑑識官になる道筋と方法とは?

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1、鑑識官とは?

 鑑識官とは、鑑識課(係)に所属する警察職員の事を指します。

 【官】と言うのは公務員の事を指す言葉ですから、あってもなくても、意味は大差ありません。

 

 警察職員とは警察事務職員も含む表現ですので、鑑識官は必ずしも警察官ではありません。

 

 この辺りも含めて、少し説明します。

 

 

2、鑑識官の所属

 鑑識官は大きく2つの所属に分かれています。

 

 鑑識官は

【警察署刑事課鑑識係】

【警察本部刑事部鑑識課】

のどちらかの所属になります。

 

 警察本部交通部に交通鑑識もありますが、イメージするいわゆる鑑識とは違うので、今回は省略します。

 

 

<警察署の鑑識官>

 構成員は全て警察官です。

 警察事務職員はいません。

 

 都道府県や規模によって配属人数は違います。

 私が知っている県警だと、

中規模警察署(署員約200人)で鑑識官は2名

です。

 

 大規模警察署(署員約500人)で鑑識官は3名

です。

 この人数からもわかるように、とても狭き門です。

 もちろん、仕事量が少ないから人員も少ないのではなく、少数精鋭なだけです。

 

 警察署所属の鑑識官が出動する事件に決まりはありません。

 手が空いていればどの事件でも臨場し得ます。

 ただし、先程も言ったように少人数で様々な業務、情報管理等をしつつ、現場臨場もするため、軽微な事件に臨場する余裕はありません。

 

 概ね重罪、空き巣等の侵入盗、ひったくり、自動車盗辺りに臨場するイメージがあります。

 鑑識官の優先順位の判断次第なので、一概には言えませんが。

 

 事件現場で、あまり指揮権はありません

 刑事課の係長や課長の指示に従って動く感じです。

 

 

<警察本部の鑑識官>

 構成員は警察職員(警察官+警察事務員)です。

 都道府県によって配属人数は違いますが、私が知っている県警だと約100名います。

 

 現場に臨場する鑑識官全て警察官で、本部の各方面支部にいます。

 彼らは警察本部刑事部鑑識課機動鑑識〔通称:機鑑(キカン)〕と呼ばれます。

 その県警では県下全てを30名(一日の実働数は10名)で扱います。

 

 10名×3係(30名)あり、毎日24時間制で交代しながら勤務しています。

 一日の実働人数10名各方面(5方面)に分かれているため、各方面には2名の本部鑑識官が常に動いている状態です。

 

 これ以外に普段臨場しない役職者等も入れると約40~50名くらいが警察官です。

 

 その他の警察事務員の鑑識官は主に警察本部内で、指紋や足跡等の照合鑑定や警察犬の検定試験を計画等しています。

 

 その県警は警察官だけで1万人を超えますので、狭き門に変わりは有りませんね。

 

 

 機動鑑識が出動する事件には決まりがあります。

◎、重罪六種(放火、殺人、強盗、強姦、強制わいせつ、略取誘拐)

◎、重罪に発展可能性が高い事件(侵入盗、ひったくり等)

◎、世間的に話題性の高い事件(ニュースで取り上げられるような事件)

となっています。

 

 2名県下1/5の範囲(警察署7~9署分くらいの管轄)をこなすわけですから、何でもかんでも出動は出来ないんですね。

 

 事件現場での指揮権は最高位にあります。

 彼らの指示であれば警察本部長でも従わなければなりません。

 

 笑い話と言うわけではありませんが、本部鑑識官の巡査部長が活動中に、事件現場に不用意に入った警察官を

「ふざけんな、てめぇ!証拠を壊す気か!出ていけ!」

と怒鳴って追い出しました。

 その後、その警察官は警察本部刑事部長(警視正)だった!なんて事が実際にあります。

 

 事件現場においては、そのくらいに強い指揮権を持っています。

 これは巡査(長)の本部鑑識官にもある指揮権です。

 

※ 県警によっては巡査部長以上じゃないと本部警察官になれません。

  私が知っている県警は巡査でも警察本部警察官になれます。

 

 

3、鑑識官になる道順

※ 警察事務員がなる方法を私は知りませんので、省略します。

<大まかな全体像>

【警察官採用試験】→【警察学校初任科】→【警察署地域課交番】→【警察学校初任補習科】→【警察署地域課交番】→【警察本部パトカー専科】→【警察署地域課警ら係】→【警察学校留置管理専科】→【警察署留置管理課】→【警察学校鑑識専科】→【警察署刑事課鑑識係】

 

※ 基本的にこれら全てを経験していかないとなれません。

  順調に進めて、概ね3年掛かります。

 

<少し詳しい道順の説明>

① 警察官になる

 まずは警察官採用試験に合格して警察官になる必要があります。

 警察官採用試験の受験票の貰い方や勉強方法はこちら

note.mu

 

② 警察学校初任科を卒業する

 警察官採用試験に合格すると警察学校で警察官として必要な知識やスキル、検定や資格等を取得する訓練を行います。

 

 成績が悪すぎたり、訓練についていけずに挫折せず卒業を目指します。

 警察学校についてはこちら

note.mu

 

 

③ 警察署地域課交番

 警察学校を卒業すると警察署地域課の交番に配属されます。

 どの警察署になるかは異動なので、何とも言えません。

 言い渡されるだけです。

 

 

④ 警察学校初任補習科(総合科)を卒業する

 現場経験を数ヶ月積んだ後、再度警察学校に入校し直します。

 現場と知識の両方を持って再度学ぶと言うことですね。

 

 初任科で各種初級の検定を取得しており、初任補習科では中級取得を目指します。

 鑑識検定には中級検定がないので、検定試験は取りません。

 

 

⑤ 警察署地域課交番

 初任補習科に入っていても所属は変わりませんので、再度交番に戻ります。

 制度上はまだ研修・見習い期間ですが、現場上司からは初任補習科卒業と同時に一人前とみなされますので、単独での勤務等もさせられ得ます。

 

 

⑥ 緊急車両検定

 警察は緊急車両検定試験を取得しないと公私共に車両の運転許可が下りません。

 そのため、緊急車両検定試験の取得を目指します。

 3級・・・公用車の普通の運転のみ許可

 2級・・・サポーターを助手席に載せていれば緊急走行が可

 1級・・・単独で緊急走行が可

 

 そのため、2級を取得するまで何度でも受験させられるのが普通です。

 この検定試験に合格できないとパトカー勤務になれないため、それ以降の留置管理課や鑑識官には当然なれません。

 

 

⑦ 警察本部パトカー専科を卒業

 専科とは、専門的な訓練のことです。

 その多くは警察学校に入校して行いますが、このパトカー専科だけは警察本部の訓練施設で訓練することが主流です。

 警察学校にパトカーの訓練施設はありませんからね。

 

 警察署から数名選抜されて訓練を受けることになります。

 

 

⑧ 警察署地域課警ら係

 交番の警察官の中でやる気のある警察官は警ら係、要はパトカー勤務に異動となります。

 その前の専科はこの異動のための訓練になります。

 

 なお、異動に伴う専科はパトカー専科に限らず、異動後受けることもあるので、順番は前後し得ます。

 

 

⑨ 警察学校留置管理専科

 留置管理課に異動するための専科で、警察学校に入校します。

 やはり警察署から選抜で数名しか行けません。

 

 

⑩ 警察署留置管理課

 逮捕された被疑者の生活補助や監視、護送等を行う部署です。

 

「鑑識官になりたい!」

等の希望者で、警ら係の中から優秀な警察官が異動となります。

 

 留置管理課にいる間だけ警察官は司法権限を失いますので、捜査に加わることは出来ません。

 完全な行政職員になります。

 

 

⑪ 鑑識専科

 鑑識として現場で必要な技術や知識を身に付ける専科です。

 警察署から1名の選抜者しか行けません。

 そのため、通常は新しい鑑識官になる者がいる場合は、その者が行きます。

 

 その予定がない場合は、鑑識官希望者の中から選抜されます。

 

 指紋、足跡、DNA、写真・ストロボ、鑑識科学等のスキル。

 

 科捜研の博士達による授業等を受けます。

 実際に科捜研に行って教わることもします。

 

 最後に鑑識上級検定の一部も受験し、取得を目指します。

 鑑識上級検定については、こちら

note.mu

 

 

⑫ 警察署鑑識課

 これら全てをこなして、留置管理課の中から、鑑識係の係長等から

「こいつを是非うちにくれ!」

と声の掛かった警察官が優先して、警察署の鑑識官になれます。

 

 係長から声が掛からないけれど、異動によって鑑識係に欠員が出るときは鑑識希望者は鑑識官になれ得ます。

 

 その場合の異動では、係長が

「なんであいつが来るんだよ」

等とグチグチ言いますけどね。

 

 

4、最後に

 いかがでしたか?

 この道順からもわかる通り、

「鑑識官になるためには、理系の勉強をしていないとなれない」

とか

「鑑識官になるためには、特定の大学を卒業していないとなれない」

等と言うことは一切ありません。

 

 警察官としてやる気があり、性格も良く、鑑識を希望し続けていれば誰でもなり得るんです。

 

 実際に私は文系で、大学もコテコテの文系出身ですが、本部鑑識経験があります。

 鑑識上級検定も取得しています。

 

 本部への異動条件を紹介すると、更にかなりの長さになってしまうので今回は省略します。

 

 鑑識官になるためには貴方の経歴や学歴云々ではなく、警察官としての優秀さや性格が重要なんです。

 

 鑑識官になるための方法を調べるくらいなら、警察官としてのやる気を貴方の中で膨らませて下さい。

 

「鑑識官にしか興味がないから、他はやらない」

なんて態度をしていたら鑑識官にはなれません。

 そんな人はその前段階で選抜されませんからね。

 

「鑑識官に興味があるからこそ、警察官として今与えられている仕事を全力でやり、その上で鑑識のスキルを身に付ける!」

じゃなければ話になりません。

 

 そのため、他者よりもかなりの努力量が必要になります。

 他の人達に遅れを取らないくらいに、今の業務をこなしつつ、鑑識官の専門的なスキルや知識を身に付けていかなければなりませんからね。

 

 そして、その状況に対して愚痴を言ってはいけません。

 嫌々ではなく、進んでその茨の道に入っていくくらいの気概が必要です。

 そうじゃなければ性格面で弾かれます。

 

 だから努力と性格の両方が必要なんです。

 それだけの努力と前向きな姿勢があれば業績は勝手に付いてきます。

 

 鑑識官を目指す貴方は、大学等の進路や理系・文系なんてことは気にせず、是非愚痴も吐かず、全力努力を出来るような人になって下さい!

 

 鑑識官に関係した者に似顔絵捜査官と言う存在があります。

 警察が発表する指名手配犯の似顔絵等を作成する専門官です。

 

 この似顔絵捜査官になる方法はネット上でも他では見掛けません。

 私のところだけの記事に興味がある貴方はこちらの記事も是非ご覧ください。

www.policefuta.work

 

 

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