元警察本部警察官が教えます!

元警察本部警察官の管理人が警察についてあれこれ書いています。他にも法律、裁判、福祉等についても少々!

警察が貴方の指紋を勝手に登録することは有り得ない!その考えは侮辱です!

f:id:chakufuta:20190513090443p:plain

 

1、犯罪現場での指紋採取

 空巣等の事件が発生すると、警察官は現場から指紋を採取します。

 すると誰のモノかわからないけれど何かしら指紋は採取されます。

 この指紋を持ち帰り、過去の犯罪者から採取した指紋と照合します。

 

 これは既に世間に周知されていることですよね?

 

 

2、協力者指紋

 そこである不安を抱える人が一定数います。

 それが協力者指紋の取り扱いです。

 

 協力者指紋とは、事件現場から採取された指紋を照合する際、被害者等の指紋を除外するために、被害者やその家族等に協力してもらい、全指紋・掌紋を紙に採取するものです。

 

 つまり、現場から採れた指紋の中で、家族等の指紋を最初に除外するために使用する指紋です。

 

 多くの人がこの採取した協力者指紋のその後の取り扱いを不安視します。

「この指紋は使った後はどうするんですか?」

と。

 

 警察官は必ず

「破棄しますよ」

と返答します。

 

 しかし、多くの人は警察を信用していないのか、

「本当かな?本当は嘘で、勝手に登録・保管されるのでは?」

と疑心暗鬼になるようです。

 

 

3、実際はどうなのか?

 結論から言います。

 絶対に登録・保管なんてしません。

 

 本当に破棄しますし、本人の要望があれば返還もします。

 返還を拒否する警察が居る場合、それは単純に返還しに行くのに労力が必要だからというだけです。

 

 なぜ貴重な指紋情報を登録しないのか?

 それも単純です。

 

 言い方は悪いのですが、あんな指紋を登録しても警察にとって何のメリットもないからです。

 むしろデメリットの方が大きいです。

 

 だから登録しませんし、登録できるように規定や法の改正もしません。

 本当に必要なら規定や法を改正し、正々堂々と登録・保存すれば良いだけですから。

 

 警察が協力者指紋を登録・保管しない理由と、生じるデメリットを紹介します。

 

 

4、警察が協力者指紋を登録・保管しない理由とデメリット

 

<登録・保管用の指紋採取専門官>

 被疑者等の指紋を警察端末に登録するため、指紋採取するのは簡単なことではありません。

 実はかなり高度な技術を要するんです。

 

 少しでも力加減を間違えると、使い物にならない指紋になります。

 凄く繊細な力の入れ方で指紋・掌紋まで全てを採取します。

 

 その際、登録専門のスキルを持った警察官が、採取専用のスプレーを使用し、採取専用の機械で採取します。

 それでも、一回では成功しないくらいとても高度な技術を要するんです。

 

 そのため、200人規模の警察署で、特に鑑識に力を入れている警察署でも、登録指紋を採取出来る警察官は鑑識係以外に1~3名くらいしかいません。

 

 特別鑑識に力を入れていない警察署なら、鑑識係以外には一人もいないのが普通なくらいです。

 それほど高度なんです。

 

 彼らは仕事外に必死に訓練しまくって技術を高め、やっとの思いで

「登録指紋を採取して良いよ」

許可されるんです。

 

 協力者指紋なんて、登録指紋専用のスプレーも、機材も一切使いません。

 指紋採取専用のインクを使うだけで、指紋を鮮明にする等の効果はありません。

 

 更に、採取する警察官は鑑識技術に特化した警察官ではありません。

 鑑識初級検定を持っている程度のド素人です。

 

 そのため、ハッキリ言って下手くそです。

 そんな下手くそな指紋なんて登録をしたら、デメリットしかありません。

 

 鑑識技術に興味がある貴方はこちらをどうぞ。

 

 

<別事件の照合の邪魔になる>

 警察官は指紋の照合作業をコンピューターで自動照合していると思っていませんか?

 それは違います。

 手作業です。

 

 コンピューターで自動照合しているのはドラマの話です。

 指紋とはそんなに単純なモノではないんですね。

 

 警察が指紋照合をコンピューターで行うのは、候補者指紋を数十件に絞るまでです。

 

 そこからの数十件は全て手作業による照合です。

 もしも、先ほど言ったように下手くそな警察官が採取した協力者指紋を登録していると、そのせいで数十件に絞れるはずの候補指紋が数百件に増えるリスクが高まります。

 

 現在数十件に絞れることで、照合作業が1~数週間で完了するところを、協力者指紋を登録してしまうと1~数ヶ月掛かるくらいになり得ます。

 

 それは警察的にも、被害者的にもデメリットでしかありません。

 

 

5、最後に

 いかがでしたか?

 ネットから情報を入手する習慣のある貴方ならわかりますよね?

 

 情報はただ多ければ良いのではなく、キチンとしたメリットのある情報じゃなければ意味がないんです。

 無駄な惑わされるような虚偽情報はむしろ多ければ多いほど邪魔で、害しかありません。

 

 それは指紋も同じです。

 キチンと照合できるメリットのある指紋じゃなければ意味がないんです。 

 無駄な下手くそな指紋はむしろ多ければ多いほど邪魔で、害しかありません。

 

 今回は協力者指紋に絞って記事を書きましたが、交通切符の指印も同じです。

 あれは本当に印鑑の代わりで、それ以外の目的はありません。

 

 あんな下手くそな指紋なんて登録したら・・・後は同じ理由で登録はしません。

 

「協力者指紋は勝手に登録されてしまう」

なんて発言を見ると正直侮辱されていると感じます。

 

 この発言は、指紋登録のための採取許可をもらうための訓練・努力を馬鹿にされているようなものですので。

 

「あんな指紋を自分達が採取する指紋と一緒にするな!」

と言うことです。

 

 

【記事の紹介・拡散について】

 友人やネットの掲示板等に記事を紹介してくれる方がいらっしゃるようです。

 本記事は無断でも紹介可な記事です。

 

 読者登録をしていただくと更新記事等が読みやすいと思いますので、是非ご検討下さい。

 

 

 これからも宜しくお願いします。