元警察本部警察官が教えます!

元警察本部警察官の管理人が警察についてあれこれ書いています。他にも法律、裁判、福祉等についても少々!

Tポイントカードだけじゃない! 警察の照会は以前から令状不要が当たり前! 実態は?

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1、Tポイントカード事件

 ポイントカード大手のTポイントカード。

 警察から令状なしの照会に対して、利用者の個人情報を提供していたことが判明しました。

 

 このことにより、

「ふざけんな!」

「違法だろう!違法!人権侵害」

「令状なしとか有り得ない!」

と言った声が上がり、一時期大炎上しました。

 

 その後、様々なポイントカード会社も令状なしで警察に個人情報を提供していたことが判明しています。

 

 しかし、この問題、今は収束してきています。

 これだけ騒がれ、利用者に

「人権侵害」

とまで言わせた大問題が国会等に波及せず、何故収まってしまったのか?

 

 そのことについてお話します。

 

 

2、令状なしの警察からの照会

<令状なしの照会は普通!?>

 国会等に波及しないで、すぐに収束に向かっている理由は実は凄く単純です。

 その理由とは、

【昔から当たり前で、どこでもやっているから】

です。

 

 今回はポイントカードが問題視されましたが、実は他にも警察からの令状なし照会に回答している組織は無数にあります。

 

 今回Tポイントカードは明記していなかったようですが、実はネット上でサービスを提供している企業はこのことを明記している場合も多く見られます。

 

【捜査機関の方々へ】

【捜査照会に関して】

のような項目が設置されています。

 

 そこに

【照会に関しては捜査関係事項証明書による照会じゃないと回答できません】

のような事が書かれています。

 

 もしも万が一見た記憶がない貴方は、目に入っていても興味がなかっただけかと思います。

 

 

<こんな組織も提供していた!?>

 恐らく皆さんが思い浮かぶ、個人情報を扱っている組織はほぼ全て、令状なしで警察に情報を提供しています。

 

 個人の情報を扱っている組織の中で、一番詳しい情報を持っている組織も令状なしで昔から個人の情報を提供しています。

 その組織とは、役所等の公的機関です。

 

 令状なしで、戸籍等も取れます。

 役所が令状なしで提供している個人情報はポイントカードに載っている情報の比じゃないですよ。

 

 これが今まで問題視されたことはありません。

 それどころか、今回令状なしで個人情報を提供している実態を今まで知らなかった人達が知り、炎上したのにも関わらず、役所への批判が一切見られません。

 

 この問題に対して批判している人達は、炎上に乗っかって楽しんでいる人達が多くいるとしか思えませんね。

(全てとは言いませんが)

 

 

3、警察の照会

<令状なしの照会>

 では、警察からの令状なしの照会とはどんなものなのでしょうか?

 実は厳密には照会方法に決まりはありません。

 

 書類による方法だけではなく、口頭、電話でも問題はありません。

 

 しかし、多くの組織では

「それではキチンとした捜査協力としての照会に対しての個人情報提供と証明できない」

と言う理由から警察に照会書類を請求します。

 

 その書類と言うのが先ほども少し出た

【捜査関係事項証明書】

です。

 

 捜査関係事項証明書は警察官であれば誰でも出せます。

 刑事に限らず、交番でも普通に出せます。

 

 

<捜査関係事項証明書>

◎、どんな事件の捜査に関する照会か?

◎、それに伴い、何を知りたいのか?

等を明記しており、その範囲内で照会が返ってきます。

 

 捜査関係事項証明書は警察官なら誰でも出せますが、自由に出せるものではありません。

 

 捜査関係事項証明書の発行のためには、先ほど書いたような、

◎、何に対して

◎、何の情報が必要なのか?

◎、照会する警察官は誰か?

等を明記した上で、複数人による決裁が必要です。

 

 更に、保管書類ですので、副本の保管もしますし、固有番号が全ての書類に付されていますので、万が一不正使用したら即バレます。

 照会している警察官名も記載されていますからね。

 

 

<令状による照会>

 実は照会令状と言うモノはありません。

 

 そのため、令状による照会とは、

【捜索差押え】

の事だと思います。

 

 つまり令状による照会とは、

【関係機関に対して、所有している個人情報を差押えて入手する】

と言う事になるかと思います。

 

 今回のTポイントカード事件で

「令状なしで情報を警察に提供するな」

と主張している人は、

「企業は毎回捜索差押えを受けろ」

と言っているのと同じですね。

 

 

<全ての照会を差押えにすると?>

 捜索差押えは強制的な司法手続きですので、手続きが厳密で時間がかなり掛かります。

 

 照会がある度に数名の社員が半日~数日仕事が出来なくなると思って下さい。

 それでは、企業活動に大きな打撃になり得ます。

 

 利用者目線だけで意見している分には

「そんなの自分には関係ない」

と言えるかもしれません。

 

 しかし、貴方の職場でも同じことになるわけですから、勤め人も、経営者も無関係ではありません。

 

「私の職場は大手じゃないから照会なんてないよ」

なんて考えていたら甘いです。

 

 町工場にでも警察は照会を掛けます。

 実際私も、照会するために企業名を調べるまで知らなかった中小企業なんて幾らでもあります。

 

 捜査関係事項証明書による照会で、書類を持参の照会だけでも社長さんに数時間お時間を頂いた町の中小企業もありました。

 

 それが令状による捜索差押えになると・・・想像しただけでも恐怖ですよね。

 

 今までは郵送でも対応可能だった照会が、全て複数人の警察官が押し寄せての差押え、押収と言うモノになるわけですからね。

 

 私から言わせるとその方が異常な光景に見えてしまいます。

 

 

4、令状なし照会の根拠

 令状なしで警察が何かしようとすると必ず言われるのが

「法的な根拠は?」

です。

 

 職質でも腐るほど言われていますからね。

 ちなみに職質の法的根拠に関してはこちら

 

www.policefuta.work

 

 令状なしで警察が照会する法的根拠は

刑事訴訟法第197条

 捜査については、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。

 

 令状が必要なんてどこにも書かれていませんね。

 ちなみに、個人情報に関して権利主張をする人が大好きな個人情報保護法にも同様の事が書かれています。

 

個人情報保護法第16条

※細かい部分省略

 法令に基づく行為の場合は、本人の同意を得ず、取得目的を超えて取り扱うことが出来る。

 

 だから個人情報の根幹となる戸籍等を役所ですら令状なしで提供しているわけですね。

 

 

5、最後に

 今回の照会問題だけではなく、全般的に令状と言うモノ、強制捜査と言うものを簡単に考えている人が多い印象を受けます。

 

 例えば、職質での尿検査。

「尿検査したいなら令状を持ってこい。そしたら提出してやる」

このような主張。

 

 これは権利を主張しているつもりなのでしょうが、

「令状が出たら、尿を出せば良い」

なんて軽い行為じゃ済みません。

 

 医師がやりますが、令状が出たら尿道口からカテーテルを無理矢理差し込んで膀胱から尿を無理矢理採取するんです。

 それが令状による強制的な尿採取です。

 

 キシロカインと言う塗るタイプの麻酔を使用するのが一般的だと思いますが、この麻酔薬をしていても物凄い激痛と聞きます。

 

「令状を持ってこい!」

と言うのは、尿採取に限らず、このくらいの差があることだと言うことは知っておくべきかと思います。

 

 当然それに割かれる警察官の人数や労力も物凄く多くなりますので、

【税金の無駄使い】

をさせているのは、そのような権利主張をしている人達のせいでもあります。

 

 だから、

「あまりに令状とか強制と言うモノを軽く見ている風潮があるな」

と感じるわけです。

 

 これらを踏まえ、貴方は照会は全て捜索差押えにし、日本全体の経済活動を委縮させ、警察に税金を無駄使いさせてでも照会は令状に統一すべきと考えますか?

 

 

 

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