元警察本部警察官が教えます!

元警察本部警察官の管理人が警察についてあれこれ書いています。他にも法律、裁判、福祉等についても少々!

犯罪被害に遭った大切な人のために、貴方が出来る支援方法。

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1、大切な人が犯罪被害に遭った!

 私の周りでもそうですし、ネット上でもそうですが、大切な人が犯罪被害等に遭った時、怒りの感情を露わにする人が多くいます。


 そして必ずこう質問されます。

「私が、被害に遭った大切な人のために出来ることは何ですか?」

と。

 

 私から言わせると

「安易に怒りの感情を露わにしているような状態の人に出来ることは何もありません。」

 

 



2、怒りの感情を露わにしない

<被害に遭ったことを言いたくない理由>

 被害者にもよりますが、多くの場合、被害に遭った人は、自分の周囲の人間にその事実を打ち明けることを躊躇します。


 理由は様々ですが、その多くは騒がれるからです。


「何で貴方が」

と泣かれてしまったり、

「クソ野郎が!犯人ぶっ殺してやる」

みたいな生の怒りの感情を爆発させるのが目に見えているからです。

 

 そうなんです。 犯罪被害等に遭った場合、被害者は周囲の人達に

「感情を露わにして欲しくない」

と思っているんです。

 

 ただでさえ犯罪の被害に遭ったショック等で混乱状態なのに、そんな強い負の感情を周囲で撒き散らされたら負担が増すだけなんです。

 


<負の感情は被害者を追い込む>

 負の感情を露わにすると、まず間違いなく

「やっぱり言わなければ良かった」

となります。

 

 怒りの感情に対しては

「怖い。止めて」

と怯えます。

 

「犯罪被害に遭って怖い思いをしている大切な人を、更に怖がらせてどうするんだ!」と言う話です。

 

 更に周囲の人間が強い感情を露わにしていると被害者は

「自分のせいで」

「この人を落ち着かせないと」

等と考えます。

 

 つまり、解決しなければならない問題が増えると言う認識になります。

 これは犯罪被害者にとって負担以外の何物でもありません。

 

 犯罪被害に遭った大切な人のためと言うことはわかりますが、周囲の人間の感情は犯罪被害者のためにはなりません。


 本当に犯罪被害に遭った大切な人のためを思うなら、自身は感情を抑えるべきです。
 まずはそこからです。

 

 


3、何をしてあげられるのか?

 結論から言うと、貴方が勉強をし、努力をすべきです。

 私が考える支える方法はこうです。

 それを行うための勉強と努力です。

 


<明確な選択肢を示す>

 正直犯罪被害に遭った大切な人が何を負担に感じ、何を望んでいるのかはわかりませんし、わかっても、要所要所では違ってくる場合もあります。


 そのため、犯罪被害者に明確な選択肢を与え、自身に判断してもらいます。

 

 例えば、このような感じに情報提供をします。
 現時点ではAと、Bと、Cと言う選択が出来ます。

 Aを選択するとメリットとデメリットはこうで、負担はこのくらい。

 Bを選択するとメリットとデメリットはこうで・・・・・

 Cを選択すると・・・・

 このように選択肢と、選択した場合のメリット・デメリット、負担量を明確に示します。

 この負担量がとても重要です。

 

 そして、大切な人本人の選択に委ねます。

「この選択をした方が良いんじゃないの?」

のようなことは言いません。

 

 その誘導は結局貴方の感情であって、被害者本人の意思でも感情でもありませんので。

 


<労力を惜しまない>

 犯罪被害に遭っていると、その事実を受け止めることだけで一杯一杯です。

 そのため、ちょっとした行動や労力もとんでもない負担になります。


 それを支援する貴方はどの選択肢を選んでも大切な人の労力が最小限になるように準備をしておくべきです。


 選択肢を提供する時点で、A、B、C、どの行動も直ぐに起こせるくらいの準備事前にしておくべきです。

 

 被害者本人が選択してから、その支援の準備を始めるのでは遅いくらいです。

 

 選択してから行動を起こすとなると、犯罪被害に遭った大切な人は

「自分がそれを選択したから面倒を掛けてしまった。申し訳ない」

と感じてしまいます。

 

 これも本人にとっては負担になります。

 しかし、選択肢を提示した時点ですでに準備が整っていれば、こうは思いません。

 


<付き添う>

 犯罪被害ですので、警察に頼る選択をする等、どこかに赴かなければならない選択肢は存在します。
 その時に、送り迎え等は当然として、アドバイスや情報提供等も行えると安心感を与えることが出来ます。

 

「この後、警察ではどんなことをするのかな?」

「どのくらい時間は掛かるのかな?」

「何回くらい警察に行かないといけないのかな?」

等々、特に警察関係は一生に一度関わるかどうかな世界でしょうから、被害者は不安だらけです。


 それをある程度明確に提示できるように付き添う努力は必須です。

 

 これは一人で心細い事に対しての寄り添う意味合いでの付き添いだけではありません。

 

 このような展望等を明確化し、それを理解してもらったり、受け入れたり、迷いを整理すると言う意味合いでも付き添うんです。

 

 

「一緒に行動する」

と言う意思表示としての付き添いでもあるんですね。

 

 


4、私のケース

 私の周囲でひき逃げ(犯罪)に遭った人がいました。

 そこから私が実際に行った支援をご紹介します。

 

 もちろん、警察退職後の話で、仕事としてではなく、人としてプライベートで、大切な人のためを思って行った行動です!


①、保険窓口へ行く

 その連絡を受けて私が最初にした行動は

【近所の保険会社窓口へ向かう】

です。

 

 夜勤明けで連絡を受けたのですが、その足で近所の保険会社の窓口へ行きました。

 その理由は

【政府保障事業の申請書をもらうため】

です。

 

 政府保障事業とは、簡単に言うと、ひき逃げ被害者のための補助金制度です。

 

 本来、治療費や損害賠償等は犯人が見つからないと請求できません。

 そのため、犯人が捕まらないと被害者は被害を受け損、泣き寝入り状態になってしまいます。


「それではダメでしょう!」

と言うことで、申請さえすれば国が治療費やそのせいで働けない分の給料等を支払ってくれる制度が、この

【政府保障事業】

です。

 

 保険の窓口ならどこでも申込書は貰えます。

(保険受付の委託・代行窓口ではダメです)

 

 しかし、保険窓口の人でもこの制度を知らない人がいます。

 その場合は、保険屋さんにも勉強してもらい、後日自宅へ郵送してもらうことになります。

 

 実際に私の時も

「すみません。私共ではその制度を良く知らないもので、本社に問い合わせ後キチンとお調べして書類を郵送させていただきます」

と対応してもらいました。



② 警察の行う手続き等の説明

 私に連絡がきた時点で既に実況見分後だったので、実況見分での付き添いはできませんでした。


 更に、警察介入後だったので、最初の選択肢提供もしていません。


 警察介入前であれば

◎ 警察を介入させる。介入させた場合のメリット・デメリットと負担量

 

◎ 警察を介入させない。介入させない場合のメリットとデメリットと、その場合に取れる方法とその負担量。

等の情報提供をする準備はしたと思います。

 

「こうしていただろう」

の話はともかく、実際に行ったのは、

◎、ひき逃げは警察署の交通課事故捜査係(通称:センター係)が専属で行うこと

 

◎、実況見分が終わっているので、呼び出しは基本的に一回。

  状況を聞き取る調書を作成する目的。(進展すれば再度呼ばれることはある。)

 

◎、時間にしたら慣れた人が取り調べをするなら30分~2時間

  慣れない人が行うと3~4時間くらい掛かる。

 

◎、取り調べする部屋は、基本的には交通課のセンター係の部屋の一角
このようなことを説明しました。

 


③ 付き添い

 警察署への呼び出しの時に送り迎えをしました。

 受付(警務課)にセンターの場所を聞いて、センターまでの案内も自分がしました。


 その警察署は本部にいる頃も行ったことがない警察署だったので署内の配置はわからなかったので。


 取り調べも隣に同席して、被害者が疑問に思うことは都度私が説明しながら進めてもらいました。

 取り調べをしている警察官に聞きにくいことや質問をし難い場合も多いですからね。

 

 もっとも、私が支援した被害者の疑問は、調書の割印

「このハンコって何ための押印?さっき名前を書いたときに押したハンコだけじゃダメなの?」

みたいな、事件とは全く関係ない部分でしたけどね。

 

 そのようなことを許してくれた担当警察官にも感謝を忘れてはいけません。

 


④ 喫茶店等に寄って、話を聞く

 警察署の送り迎えだけで

「これでよし!」

と支援を完了させてしまう人が多いのですが、それでは足りません。

 

 普通の人にとって警察署でガッチリと取り調べを受ける経験なんてまずありません。

 つまり、

【凄い経験、凄い出来事】

なんです。

 

 そのため、多くの人は犯罪被害に遭った時のような興奮状態に陥っているか、犯罪被害に遭った時のように塞ぐ感じになっています。

 

 その感情を受け止めて、共有し、発散させる必要があります。
 そのための喫茶店への寄り道です。

 

 案の定色々な疑問、質問が沢山出てきました。
 事件に関係ないことでも良いんです。

 感情やわだかまったモノを発散させてあげることが目的ですので。

 


⑤ 喫茶店の代金をおごらせる

 相手との関係性にもよりますが、

「喫茶店はおごって」

と言える関係性なら、積極的におごらせましょう。

 

 自分から言えなくても、相手が

「喫茶店代金は払うよ」

と言って来たら素直におごってもらいましょう。

 

 間違っても自分から喫茶店の代金をおごらないで下さい。

 おごらせることで相手の

「自分のせいで迷惑かけて申し訳ない」

と言う感情を少しでも軽減してあげることができます。

 

 ただでさえ

「申し訳ない」

と感じている相手に対して、更に貴方が

「おごるよ」

とお金を支払ってしまったら、被害者はこの感情を発散出来る場面がなくなってしまいます。


 そのため、喫茶店のお代まで勝手に出してしまうのは被害者のためになりません。

 

 こちらにそのつもりが一切なくても、

【恩返しする場面を作る】

と言う支援の方法も重要なのだと言うことは頭に入れておきましょう。

 

 このようなお金の支払い行為は、カウンセリング技法としても活用されることがあります。

 そのくらいお金の支払い行為とは感情と密接な行為なんですね。 

 

 

 

5、最後に

【犯罪被害に遭った大切な人のためになることをする】

 犯罪被害者を支援する場合は、このことを絶対に見失ってはいけません。

 

 しかし、感情に身を委ねてしまうと、

【その事実を聞いた自分の感情を満足させるための行動】

になってしまっている人が多いです。

 

「犯人を半殺しにしてやる!」

「犯人許さねぇ!」

「ふざけんじゃねぇよ」

のような言葉が出てしまうのは自分の感情を発散させたいだけで、被害者・大切な人のためではありません。

 

【犯罪被害に遭った大切な人】

と言う事実を利用して、自分がしたいことを自分勝手にしているだけです。

 

 そんなものは支援でも何でもありません。

 大切な人のためになる行動ではありません。

 

 そこで、

「犯罪被害に遭った大切な人のために何が出来るか?」

は序盤に行った結論になります。

 

【貴方が勉強をし、努力をすべき】

 

 私は警察官関係部分は元から知識がありましたので、勉強する必要はありませんでしたが、政府保障事業等は勉強し、即行動に移しました。

 

 夜勤明けだろうと何だろうと関係なくです。
 大切な人の力になる、支援をするとはそういうことではないでしょうか?

 

 


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