元警察本部警察官が教えます!

元警察本部警察官の管理人が警察についてあれこれ書いています。他にも法律、裁判、福祉等についても少々!

被害届の証明書発行についての話

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1、被害届

 被害届は、犯罪被害を受けた時に警察に被害の内容を届け出るモノです。

 被害の届出なので、証拠の有無は関係なく届け出ることが可能です。

 

 たまに

「証拠がないから被害届を出せない」

と悩んでいる人を見掛けますが、そんなことはありません。

 被害さえ確実なら、被害届は出せます。

 

 警察が受理しないのは、その被害が犯罪の被害かどうか判断出来ない状況の時です。

【被害・損害=犯罪】

とは限りませんからね。

 

 

2、被害届の証明書

「被害届を出した証明書が欲しいのですが」

 財物被害の場合、ほとんどの被害者からこの言葉を言われます。

 

 理由としては、犯罪被害に遭った場合に、被害届を証拠資料として保険の申請をしたいからですね。

 

 結論から言うと、警察は被害届の証明書類は一切発行しません。

 そのような書式も存在しません。

 

 次の項では理由を説明します!

 

 

3、警察が証明書を出さない理由

<被疑者を捕まえられなくなり得る>

 先ほど被害届の証明書を発行すると被疑者を捕まえられなくなると言いました。

 何故か?

 それは、被害者から被疑者に情報が漏れるリスクが高いからです。

 

 被害届を出すと言う行為は非日常で、一生の中でも何度もあるような行為ではありません。

 

 そのため、多くの人は誰かに話をしたくなるんです。

 被疑者が誰だか分からない段階でそれをされてしまうと、被疑者の耳にも

「警察に届け出をした」

と言う情報が届いてしまうんですね。

 

 これは直接の知人関係になくても届きます。

 すると、被疑者は逃走してしまいます。

 

 自転車盗等の被害者だと、被害届を出す目的は

「犯人を捕まえて欲しい!」

と言う意思よりも

「保険金をもらうため」

の方が強い場合もあります。

 

 しかし被害届は保険金をもらうための制度ではありません。

 保険会社が勝手に

「証明書代わりになります」

としているだけです。

 

 そのため、警察に

「保険金をもらうため」

なんて言ったところで対応するハズありませんよね。

 

 その行為のせいで被疑者に逃げられるかもしれないんですから。

 

 そして、被害者が

「保険金がもらえるなら被疑者に逃げられても良い」

と考える場合。

 

 警察は

「それなら被害届を出すなよ。目的が違うんだよ」

と思います。

 思うだけで、【届出】を不受理にすることは出来ないんですけどね。

 

 

<詐欺に使われる>

 被害届を詐欺に使われることもあるので、慎重になります。

 この詐欺の被害者は保険会社です。

 

 ここまで言えば勘の良い人は分かりますね?

 本当は犯罪被害に遭っていないのに、遭ったと被害届を出し、そのことにより保険金を受け取る詐欺行為です。

 

 これは実際に存在する詐欺の手口です。

 そのため、

「本当に犯罪被害に遭っているのか?」

と疑問が残るようなケースで警察は受理を渋ります。

 

 詐欺利用を疑い、受理自体を悩むんですから、証明書の発行なんて絶対にしませんよね。

 

 

4、被害届証明書の書式

 ネットで調べればわかりますが、被害届受理の証明書書式を配布しているサイトはあります。

 

 私が調べる限りだと、行政書士事務所が主ですね。

 

 しかしそれはその事務所が勝手に作成している書式なので、ハッキリと言いますが、警察は対応してくれません。

 

 もしも、万が一警察がその書式に記載をして、被害届受理の証明書を発行した場合、警察は貴方の届出した事件を捜査する気はないと思って下さい。

 

 その理由は分かりますよね?

 警察が何故証明書を発行しないのか?をもう一度見て下さい。

 事件をキッチリと追うために、被疑者に逃げられないために発行しないんですからね。

 

 それなのに発行してしまうと言うことは、もうその事件を投げ出したと言うことですよね。

 捜査を開始する優先順位は最下位に位置付けられたと思って下さい。

 

 私が知る限り、発行したと言う話は一度も聞いたことはありませんが。

 

 

5、被害届の証拠

「証明書がないなら、保険利用できないじゃん!」

と悩む人がいるかもしれません。

 

 しかし、それは大丈夫です!

 

 あくまでも警察は【書類】と言うモノとして発行しないだけで、保険金をもらうための証拠なら教示します。

 

 それは

【被害届の受理番号】

です。

 

 警察は被害届を受理した後に、書類や事件を管理するために端末登録をし、被害届一件一件全てに受理番号と言う番号の発行手続きをします。

 

 その手続きが終わっていれば、教えてもらえます。

 他に事件・事故等の通報が入っておらず、対応が早い警察官であれば、30分もあれば登録は完了させます。

 

 交番で自転車盗なら、一人が実況見分をしている間に、別の警察官が登録を済ませておき、その場で教えるなんてことも有り得ます。

 

 ただし、警察署によっては、後日電話で対応したり、刑事課からじゃないと教えないとか、警察署に行かないと教えないとか、受理番号の教示方法に関してはマチマチですので、問い合わせをして下さい。

 

 その辺りに関しては、その時の忙しさや対応した警察官次第です。

 

 そして、その番号を保険会社に伝えれば被害届を出した証明になります。

 つまり、被害届の証明書が無くても事足りるわけです。

 

 証明書がなくてもキチンと社会が回っているのに、被疑者に逃げられるリスクを高めてまで証明書を発行するメリットはないんですね。

 

 

6、最後に

 警察にとって被害届の受理をした証明書を発行する行為はデメリットしかありません。

 

 警察の事件捜査に関するデメリットと言うことは、社会秩序のデメリットと言うことです。

 

 頑なに発行していない警察署では、どんなにゴネても発行はされないと思って下さい。

 

 素直に被害届の受理番号を教えてもらいましょう。

 

 

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