元警察本部警察官が教えます!

元警察本部警察官の管理人が警察についてあれこれ書いています。他にも法律、裁判、福祉等についても少々!

逮捕されたら何をするの? どうなるの?

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1、逮捕

 犯罪を犯し、逮捕の要件を満たした者は逮捕されます。

 

 逮捕とは、犯人(=被疑者)の身柄を強制的に拘束する行為です。

 

 そのため、

「警察が犯人を検挙した・捕まえた」

と言った場合、必ずしも逮捕したとは限りません。

 

 検挙とは、要は警察が犯人を捕まえる事を指します。

 

 しかし、検挙には逮捕以外にも、在宅取り調べや交通取り締まり等のような手段もあります。

 

 つまり、逮捕とは、検挙の種類の一つでしかありません。

 そして逮捕は、検挙の種類の中でも最も強烈な手段で、犯人の人権を大きく侵害してでも拘束しないと行けない時に行う検挙方法なんですね。

 

 

2、逮捕は犯人の人権を侵害する

「犯人なんだから、捕まえるために人権侵害くらいしても良くない?」

と考える人もいるかもしれません。

 しかし、そう考えてしまうと物凄く軽微な違反者の人権も侵害して良い事になってしまいます。

 

「交通違反者に対しても人権を侵害して逮捕しますか?」

「道端に落ちている1円を貰ってしまった人・子供も逮捕しますか?」

「ゴミ出しの時間を守らない人も逮捕しますか?」

「自転車でお喋りしながら運転している人を逮捕しますか?」

 

犯人なんだから、人権侵害しても良いじゃんと考える場合は、

「このような軽微なことでも逮捕しろよ!」

と言っているのと同じです。

 

 何でもかんでも逮捕して犯人の人権侵害を侵害しても良いとすると恐らく国民の生活が崩壊します。

 

 そこで、現行の法律では、

「例え犯人だとしても、何でもかんでも人権侵害して良いとは考えない!」

わけですね。

 

 あくまでも身柄を拘束しないと逃げられてしまうとか、その犯人を拘束しないと周辺住民に不安が募る等の場合に身柄を拘束する、人権侵害をするようにしているわけですね。

 

 

3、逮捕後の話

 さて、検挙と逮捕の関係性について話してきましたが、次に逮捕後の話に入っていきます。

 恐らく多くの人はここからの話をあまり知らないと思います。

 私も警察官になるまでは全く知りませんでした。

 

 多くの国民は

【逮捕=解決・終了】

と感覚的に思っています。

 

 しかし、全然違います。

 むしろ警察的には

「逮捕後からが本番」

と言うくらいに忙しくなります。

 

 

4、現行犯逮捕の場合

 逮捕は前もって逮捕令状を発行しておき、それに基づいて逮捕する通常逮捕と言う方法が基本となります。

 しかし、現行犯逮捕と言う逮捕方法では前もって逮捕令状がありません。

 

 目の前で突発的に発生した犯罪の犯人をその場で捕まえる逮捕だからです。

 そのため、現行犯逮捕だけ、逮捕後の動きが他の逮捕とは違ってきます。

 

 現行犯逮捕をした場合、直ちに逮捕令状の発行を受けないといけません。

【直ちに】

等の法律用語の意味は

 

www.policefuta.work

 を併せてお読みください。

 

 

 逮捕令状を請求するために、被害者や目撃者、逮捕者等からの供述調書を作成したり、逮捕状況の報告書や遺留品等の書類、犯人の過去の犯歴等の照会書類等々、大量の書類を作成します。

 これらを直ちに作成しないといけません。

 

 直ちにですので、手の空いている警察官皆で取り組みます。

 それでも数時間掛かります。

 

 私人が現行犯逮捕をすると、逮捕した人も警察に数時間拘束されるのはこの作業のためです。

 

 

5、逮捕~留置場

 ここからはどの逮捕でも共通の部分になります。

<弁解録取書の作成>

 逮捕された犯人から、

「何か言いたいことはないか?」

弁明を聞かなければなりません。

 

 この弁明も【直ちに】です。

 そのため、他の手続きよりも優先して行わなければならないことです。

 

 ニュースでも、逮捕直後の犯人の言っていることが報道されることがありますが、この弁解の内容を言っているのかと思います。

 

 

<犯人の所持品を調べる>

 犯人の所持品を調べます。

 凶器等を持っていたら大変ですし、留置場に持ち込める物は制限されていますからね。

 もっとも、凶器を持っているかどうかは、逮捕時その場で身体捜索をして調べているのが普通ですが。

 

 留置場にはひも状の物(ズボンのゴムや紐等)は持ち込めませんので、逮捕直後の身体捜索とは見ている物が違います。

 ひも状の物が持ち込めない理由は、犯人の自殺予防のためです。

 

 

<泊まる>

 犯人は諸々の細かい手続きやチェックが終わると、留置場で一晩過ごします。

 布団・毛布類は留置場の物を借りることになります。

 

 使いまわしですので、衛生的にどうなのか心配になってしまう感じの布団と毛布です。

 私は留置管理課経験がないため、実際の管理がどうなっているのかまでは知りません。

 

 なお、個室か、複数人部屋かはその犯人の立場や精神状況等によって変わってきます。

 元検察官とか、元警察官有名人等が犯人の場合は個室になるのが一般的です。 

 

 それは優遇しているのではなく、他の被疑者にバレると留置場内の治安が壊れるリスクがあるためです。

 

 ただし、元検察官や元警察官、有名人等でも複数人部屋になることがあります。

 それは自殺の可能性が高い精神状態の場合です。

 

 それなりの立場にあった者ですから、逮捕のショックが大きすぎる場合があります。

(犯罪を犯しているので自業自得ではあるんですけどね ^^;)

 

 留置場は犯人にキチンと裁判を受けさせ、生きて罪を償わせるまでの管理が仕事ですので、自殺されるわけにはいきません。

 

 そのため、留置場の治安が壊れるリスク犯人の自殺とを天秤に掛け、複数人部屋にすることもあるわけですね。

 

 

6、送検

 留置場で一晩過ごしたら翌朝検察庁に送検されます。

 送検、つまり検察庁に連れて行きます。

 それを一般的に新件護送と言います。

 

 護送手段は幾つかありますが、今回は省略します。

 

 検察庁に着くと、その都道府県内の昨日逮捕された犯人達が一ヶ所に集められています。

 検察庁内の留置施設に入れます。

 

 とても椅子が硬く、長時間座っていると体が痛くなります。

 都道府県によって違うかもしれませんが、警察官も硬い似たような椅子に座って検察官に呼ばれるのを待つので、警察官も辛いんです。

 

 そして、検察官から呼び出しがあるまで、ひたすら何時間も待ちます。

 呼び出しがあると、検察官からの取り調べが簡単にですが行われます。

 

 

7、裁判所へ行く

 検察官からの取り調べが終わると、再度検察庁内の留置施設に入れます。

 そして、今度は検察庁と隣接する裁判所からの呼び出しを待ちます。

 

 これも数時間掛かります。

 

 裁判所から呼び出しを受けると、徒歩で裁判所に行きます。

 裁判所と言っても法廷ではなく、個室です。

 そこで、裁判官から色々な質問をされます。

 

 それによって

◎、今後何日間留置場にて継続的に留置するか?

◎、どこの留置場に留置するか?

等の判断がされます。

 

 その際、

留置場の場所を誰に教えたいか?」

質問されます。

 

 そこで犯人本人が答えた住所地にだけ、裁判所から留置場所が記載された手紙が郵送されます。

 

 そのため、その手紙が届いていない人へ警察や検察官等から留置場所を教えることはありません。

 

 たまに

「友人や恋人が逮捕されたのですが、どこに留置されているか調べる方法はありますか?」

との質問を見ますが、その手紙が郵送された人に聞く以外には調べられません。

 

 

8、留置場へ

 裁判所での質問が終わり、その後拘留令状が発行されるまで待ちます。

 そこで、どの留置場に、何日間留置することになったかを読み上げて執行することになります。

 

 そこまで終わって初めて留置場に帰れます。

 昨晩泊まった留置場と同じ場所とは限りませんが。

 

 混み具合によりますが、ここまでで夕方になっています。

 早い時には午後2時ころには終わります。

 遅いと午後9時を超えます。

 

 もう一度言いますが、この間ずっと硬い椅子に座っているので体が痛いと思います。

 先ほども言ったように、それまでは護送している警察官も同じような椅子に座っているので、とても疲れます。

 

 

9、留置期間

 ここまでして、留置場に最大10日間留置されることになります。

 しかし、10日間では調べが終わらない時もあります。

 

 その場合は、再度同じ手続きを踏んで10日間延長してもらうことがあります。

 つまり最大20日間の留置ですね。

 

 細かい決まりの部分だけを見て

「最大23日間だ!」

と言う人もいますが、私は実務上の話で言っています。

 

 法的な決まりでそう出来たとしても、実務上は出来ませんので。

「決まりだから!」

だけで動いていたら検察官や裁判官に物凄く嫌われると思います。

 

 

 その期間を過ぎるときに検察官が

「裁判をするか?裁判をしないで釈放するか?」

を判断します。

 

 そこで、裁判をする(=起訴)と判断したら裁判の手続きに移行します。

 芸能人等が逮捕後に始めて報道陣の前に姿を見せる場面が報道されますが、それはこの裁判手続きに移行してからの話になります。

 

 裁判手続きに移行すると保釈金を支払うことで、保釈されることが可能になるためですね。

 

 

 そこで略式訴訟をすると判断したら、最終日に罰金等を支払うことで釈放となります。

 

 そこで、裁判をしない(=不起訴)と判断したらそのまま釈放となります。

 

 

10、最後に

 物凄くザックリですが、逮捕後の手続きを見てきました。

 

 ニュースではいつも

「○○が逮捕されました!」

なんて報道が常に流れていますが、その時には毎回このようなことが行われているんですね。

 

 是非

「逮捕=解決・終了」

ではなく、

「今日逮捕だから、今はこれをしてるんだな!」

まで考えられると、ニュースの見え方がまた少し違ってくるかもしれませんね。

 

 有名人が逮捕されてから10日、又は20日後

「保釈されるか?」

と見ることも出来ますしね。

 

 

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