元警察本部警察官が教えます!

元警察本部警察官の管理人が警察についてあれこれ書いています。他にも法律、裁判、福祉等についても少々!

「検挙と逮捕はイコールではない!」 検挙と逮捕の違いを説明します。

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はじめに

 事件で警察が動くと、犯人を検挙すると言うことは多くの人が知っていると思います。

 

 しかし、検挙と逮捕の違いや、逮捕の種類逮捕する場合と、逮捕しない場合等の知識を持っている人は少ないように感じます。

 

 そこで今回は、それらの紹介をします。

 

 

1、逮捕とは?

 身柄を強制的に拘束して、留置施設に入れる行為です。

 

 そして、逮捕を行うには要件を満たす必要があります。

 そのため、犯罪者を見つけても必ずしも逮捕出来るとは限りません。

 

◎ 逃走の恐れがある

◎ 証拠隠滅の恐れがある

 

 このどちらかの要件を満たすと逮捕可能です。

 

 ただし、これらを判断する場合には、色々と法的な視点で総合的に判断しますので、法知識がなく感情だけで安易に「逃走の恐れがあるのに逮捕しないのか!?」のような主張をすると恥をかきます。

 

 この2つの条件は逮捕全般に必要な条件です。

 

 次に逮捕の種類について言っていきます。

 その種類によっては条件が加算されます。

 

<通常逮捕>

 捜査を行い、容疑が固まった時点で、逮捕令状を請求して、逮捕令状に基づいて逮捕します。

 これが原則的な逮捕の種類です。

 いわゆる令状主義による逮捕ですね。

 

 これを行うためには、先ほどあげた2つの条件を満たせば可能です。

 

<現行犯逮捕>

 現に今目の前で犯罪が行われている場合に行える逮捕です。

 この場合は、今目の前で起きているのですから、犯人を間違えようがありません。

 

 そのため、警察等の捜査機関だけではなく、一般市民でも逮捕可能です。

 

 今目の前で行われている場合以外にも一瞬も目を離さないで追いかけ続けている場合等に行える準現行犯逮捕と言う形式もあるのですが、そこまで言い出すとややこしくなると思いますので省略します。

 

 ちなみに、現行犯逮捕も、逮捕後に逮捕令状を請求しなければなりませんので、私人が逮捕した場合には直ぐに警察に協力しないといけません。

 

「今は予定があるので協力できません」

は認められないと思って下さい。

 

 逮捕者の協力がなければ逮捕令状を請求するための書類が揃いませんので、不正手続きとなり釈放になり得ます。

 

<緊急逮捕>

 これは異例中の異例な逮捕種類です。

 令状がない状態で、現行犯でもないのに逮捕可能です。

 そのため、被疑者を間違えてしまう恐れが一番高いです。

 

 だから緊急逮捕出来る要件は他の逮捕種類よりも厳しいモノとなっています。

◎ 被疑者が重罪を犯していること

◎ その者が前述の罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由があること

◎ 急速を要し、裁判官の逮捕状を求めることができないこと

これら全てを満たしていることが条件です。

 

 つまり

「重罪人を野放しにするのは危険だから、例外だよ!」

ってことです。

 

 この場合でも逮捕後に逮捕令状の請求は必要です。

 私人では緊急逮捕は出来ません。

 

 

2、任意取り調べ

 逃走の恐れがなく、証拠隠滅の恐れもない、ましてや重罪犯でもない被疑者だって沢山いますよね?

 

 その場合は当然逮捕要件を満たしませんので、逮捕は出来ません。

 違法逮捕になってしまいます。

 

 では、逮捕できないなら犯罪者を無罪放免にしてしまうのか?

 と言うとそうではありません。

 

 そこで逮捕できない被疑者は任意取り調べ手続きで捕まえます。

 逮捕のように身柄を拘束しての強制的なことは出来ませんので、任意検挙等とも呼ばれます。

 

 この場合は、後日出頭することを約束させることによって家に帰らせ、後日に出頭させて取り調べを行います。

 

 そして、書類だけ検察庁へ送検します。

 身柄は送検しません。

(逮捕だと身柄も検察庁に送ります)

 

 なお、正当な理由もなく出頭に応じない場合は逃走の恐れがあることになりますので、逮捕される可能性が出てきます。

 

 

3、検挙

 簡単に言うと【捕まえること】です。

 そのため、捕まえ方に関係なく、捕まえること全般を検挙と呼んでいます。

 

 逮捕も、任意取り調べも、交通違反も全部検挙です。

 つまり、警察が捕まえることの総称です。

 

 犬と言う犬種が存在しないのと同じですね。

 

 

4、最後に

 私のところでは特に説明する予定はありませんが、この時点で犯人の呼び方は全て【被疑者】です。

 

 【容疑者】はマスコミが視聴者に分かりやすく言い換えている言葉なので、被疑者と同じ意味です。

 

 【被告人】は手続きが進むと呼ばれる可能性がある呼び方です。

 被疑者時点で被告人と呼んでしまうと人権侵害になり得ます。

 

 いかがでしたか?

 多少説明するために言葉を変えたり、ニュアンスで表現している部分もありますが、知らない人も多かったのでは?と思います。

 

 報道関係者やSNSで事件に関して拡散する人等によっては、これらの似た言葉を間違えるだけで人権侵害になり訴えられ得ますので、ご注意ください!

 

 それ以外の方は「へぇ~そうなんだぁ~」と、少しでも興味を持ってもらえれば、ニュースの見え方が少し違って見えるかもしれません!

 

 

 

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