京都玉の湯、「常連さんへのお願い」問題を法的に見る。
1、銭湯常連さんへのお願い
京都の銭湯【玉の湯】さんが常連さんに対して注意喚起をする張り紙をしたとして、話題になっています。
その内容はこちら。
届け!!!
— 京都 玉の湯 (@kyoto_tamanoyu) May 10, 2019
銭湯経営者全員の願い( ;∀;) pic.twitter.com/hCZlUf0vK7
要は
「銭湯に馴染みのない人にとって銭湯独特のマナーはわかならないので、怒鳴らないで、優しく教えてあげて下さい」
と言うことを常連さんにお願しています。
この話題に対して、少し観点を変えて個人的な意見をしたいと思います。
2、銭湯は法律で規定されている
<店主は風紀を保つ義務がある>
あまり知られていないかもしれませんが、銭湯と言う存在は法律で規定されています。
公衆浴場法と言う法律です。
今回問題になると思われる部分は恐らく
公衆浴場法第3条一項
営業者は、公衆浴場について ~中略~ その他入浴者の衛生及び風紀に必要な措置を講じなければならない。
この中での、入浴者の風紀のための必要な措置かと思われます。
違反すると罰則もあります。
<健康で文化的な最低限度の生活>
更に、判例法による決まりなので、条文はありませんが、公衆浴場には
【同業施設との出店距離制限】
が存在します。
つまり、一定距離の中に同業施設が存在する地域には出店が出来ません。
その理由は
◎、【憲法25条 国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利がある】
この人権を保つため。
◎、上記人権を保つ目的で、公衆浴場の経営不振にならないようにするため。
◎、経営者が移転や転職等を簡単に出来ないため
等が理由です。
つまり、銭湯等の公衆浴場の経営は、公益を守るためでもあるので、常連の自分勝手だけで左右されてはいけない側面があるわけです。
普通の飲食店や物販業とは少し違い、憲法を守る公益性もあるんですね。
そのため、常連客に対してこのような注意はしなければならないんですね。
常連客ばかりを守ろうとする店主はこの罰則もある法律を知らない可能性もあると思います。
ただし、常連客しかおらず、常連客だけで経営が保たれているような公衆浴場だと意味合いが変わってきますので、一概には言えないと思います。
だから何でもかんでも
「私の近所の銭湯はこんな張り紙等しないで、常連客ヒイキをしている!風紀を乱す違反をしているから通報してやる!」
とは出来ないと思います。
あくまでも店主の義務は、
◎、公衆浴場の衛生面を保つ
◎、公衆浴場客の風紀を守る
◎、経営を出来るだけ維持する
であって、新規客を大切にする義務ではありませんので。
3、マナー
<マナーとは?>
今回の問題は法律がどうこうと言うよりも、マナーがどうか?と言う話だと思います。
しかし、日常的に使われている言葉である
【マナー】
さて、ではこのマナーとは何でしょうか?
マナーが具体的にどんな存在のことを指すのか知らなければ、マナーについて論議することは不可能ですからね。
実は決まった定義は多くあり過ぎて分かりません。
難しい問題です。
ネットで調べれば礼儀作法のことと書かれています。
しかし、私はマナー検定上の定義をマナーと呼ばせて頂きます。
【マナーとは、他人に不快な思いをさせないための所作】
です。
<玉の湯のケース>
今回の京都玉の湯さんのケースを見てみましょう。
初心者客は入浴前に体を洗わないとか、長い髪をそのままで浴槽に浸かる、タオルを浴槽に入れる等々の行為をしていると思います。
一方で常連客はそんな初心者客を怒鳴り散らす。
どちらがマナーがなっていないと思いますか?
両方マナーがなっていないように思います。
しかし、その行為をしている根拠を見てみると少し見え方が違ってきます。
<初心者客の行動>
初心者客はわざとそのような行為をしているわけではありません。
自分の家に風呂がある生活をしていれば当然公衆浴場のルールなんて知りません。
つまり、その行為が他人を不快にさせてしまうという感覚すらありません。
そのため、マナーに反していると言うよりも、未熟・無知と表現した方がシックリ来ると思います。
<常連客の行動>
常連客はわざと怒鳴り散らしています。
その理由は人それぞれでしょうが、怒鳴れば相手が不快になることは誰にでも想像できます。
それなのに敢えて怒鳴っているわけですから、マナー違反と言えます。
今回の京都玉の湯さんのケースでは常連客が明らかなマナー違反と言えると思います。
ちなみに、今回のマナーの定義で見ると、その場での習慣はマナーとは違います。
そのため、今まで常連客が作り上げた独自のルールなんてマナーには関係ありません。
この定義ではそのようなルールはマナーとは呼びません。
4、最後に
銭湯等の公衆浴場は学校の授業で習った、憲法25条:国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を守るために重要な施設の一つだったんですね。
どうしてもこの部分は
【衣・食・住】
の確保に目が行きがちですが、今の時代では衛生面の確保も文化的な生活には重要と言う事なんですね。
店主は義務を果たしただけですので、常連客等から批判されるべき部分は一切ないと思います。
そして、初心者客はある程度のマナーの知識を身に付けてから行くと、この店主を助ける事になると思います。
常連客は店主の言う通りにすれば銭湯を守る事に繋がると思います。
そのように、皆がちょっとの理解を持って行動すれば解決する問題のように感じます。
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