警察武術、逮捕術とは?
1、武道と武術
武道と武術を同一視している人が多くいます。
そこでまずは簡単に武道と武術の違いを見て行きます。
<武道>
武を磨く過程を通して、理念・精神を実現するためのモノです。
そのため、目的は強くなることではなく、理念を実現することにあります。
そのため戦い方に正々堂々等が求められます。
これに反すると
「卑怯者。臆病者」
等と批判されます。
<武術>
武の技術。
以上です。
技術そのモノを指し、そこに理念なんてありません。
そのため、使い方や目的等は習っている人によって違います。
武術は強くなることが目的です。
そこに理念は存在しないため、目的のためなら何でもありです。
武術に
「卑怯者。臆病」
なんて批判はお門違いです。
2、警察学校での武道・武術
警察学校で必修科目である柔道・又は剣道。
これを逮捕術として訓練していると勘違いしている人が一定数います。
しかし、それは誤りです。
柔剣道は列記とした武道です。
自他共栄、精力善用等の理念が存在します。
そして逮捕術は警察武術と呼ばれるように武術ですので理念なんて存在しません。
全くの別物として、全く別の技術として訓練します。
柔剣道はあくまでも理念実現が目的なので、精神鍛錬の一種で必修なだけです。
警察官が犯人と対面した時のため、強さを得るための訓練は逮捕術です。
柔剣道ではありません。
そのため、警察官が柔道白帯だったとしても弱いとは限りませんよ。
警察官の強さは柔剣道ではなく、逮捕術ですからね。
3、逮捕術とは?
逮捕に関する武のスキルです。
具体的に技の内容としては、武道の総合格闘技とイメージして下さい。
逮捕術の主な特徴ですが、
◎、死傷者を出さないために構築された技術群
◎、対戦相手を破壊ではなく、制圧するために構築された技術群
です。
武術ですので、そこに【卑怯】と言う概念はありません。
このために磨いている強さですから、それを実現するためなら何でも活用します。
それが武術です。
だから警察官は怪我をしない、させないように、複数人で戦います。
だから武器を持っている相手には、武器で応戦します。
【卑怯】
と言う概念は武道にあるモノで、武術にはありません。
「大勢で一人の犯人を取り囲んで卑怯。警察官は臆病、弱い」
なんて言っている人は、そもそも何も理解していないだけです。
自分も含めて誰も怪我すらしないことを目的に戦う場合、貴方ならどんな戦略を取りますか?
恐らく今の警察官と同じ戦略に辿りつくと思います。
警察官の戦い方は実践の中で構築された戦略であって、武道の理念から見た卑怯とか、臆病なんて評価、知ったこっちゃないんです。
<回避技>
逮捕術ではかなり重要なジャンルです。
犯人からの攻撃を回避し、そこから反撃する技が多いため、回避技は全ての始まりと言っても過言ではありません。
逮捕術は逮捕のための強さなので、当然徒手戦闘だけではなく、対武器戦闘の回避技も、ゼロ距離攻撃の回避等も訓練します。
<離脱技>
先ほどの回避技はそもそも攻撃を喰らわないための技です。
離脱技は掴まれたり、羽交い絞めにされたりした時に、行動を制限されている状況から脱するための技です。
警察官の武器を奪われそうになった時の離脱技も存在しますが、拳銃を奪われそうになった時の技は、私は教わった経験がありません。
一応逮捕術を警察官に指導する立場ではあったのですが。
<受け身>
柔道のそれとは違います。
柔道の受け身は畳で行うことを前提に作られています。
そのため、コンクリート等の固い場所には向きません。
逮捕術はコンクリート等の硬い地面で行うことを想定した受け身になっています。
そのため、柔道の受け身よりも難しいです。
当たり前ですが、本当に硬い地面でも訓練します。
<打撃技>
「警察官は打撃禁止」
なんて変なイメージ、噂を良く耳にします。
しかし、逮捕術にも打撃技は存在します。
逮捕時にそれほど使うケースはないため、技の種類は大してありませんがカウンターを受けないように殴る、蹴る技です。
<制圧技>
徒手技と警棒技と警杖技とあります。
素手での制圧と、警棒を使った制圧と、警杖を使った制圧技と言うことです。
そのため逮捕術では、素手戦闘、棒術、杖術は最低でも訓練されていると言うことです。
<短刀>
警察官として、技としては存在しませんが、逮捕術の試合では短刀も扱います。
逮捕術の試合には対短刀戦闘の種目があるため、必然的に短刀も扱うんです。
私は逮捕術の上級専科(特別なスキルを訓練するための専門教育)を頑なに断っていたので、上級訓練を受けていません。
しかし、上級者にもなると短刀扱いにも長けているので、何かしらあるかもしれません。
私が知らないだけです。
4、最後に
逮捕術は警察武術と呼ばれるように、あまり世間に知られていません。
その証拠に、序盤で言ったような
「逮捕術として柔剣道を訓練している」
と勘違いしている人が多いのもそれですよね。
しかし、逮捕術の具体的な技の本も普通に市販されていますので、守秘義務のようなモノで守られている情報でもないようです。
単純に武術として世間一般に需要がないだけかと思います。
逮捕術の強さの一端に興味がある貴方は、こちらの暴力団員との戦闘経験の記事を併せてお読みください。
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