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独学で法律を勉強する方法(行政法)

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はじめに

 本記事は

「将来のために法律を勉強したい」

と言う法学無学者向けの記事となっています。

 

 本記事から読んでいただいても問題ありませんが、こちらの記事からお読みいただく事をオススメします。

 

www.policefuta.work

 

 基礎法学では日常的に使用している言葉でも、法律用語として使うと意味が変わってしまう部分や法の種類、法の優位性等について説明しています。

 

 

1、行政法

 行政法とは行政に関わる法律の総称です。

 そのため、

【行政法】

と言う名前の法律は存在しません。

 

 イメージとしては、柴犬とか、秋田犬といった犬種はあるけれど

【犬】

と言う名前の犬種が存在しないのと同じような感じですね。

 

 行政に関わる法律と言う枠組みなので、広域には行政法の数は2000個近くに上るとも言われています。

 

 普通に考えてそんなのを全部学ぶのは不可能です。

 弁護士になるより大変になってしまいます。

 そこで、行政法の理論と核となる行政法をご紹介して行きます。

 

 

2、行政法理論

 条文のように存在しているわけではないけれど、行政法を考えて行く上で必須となる理論の話です。

 

 <法の留保>

 最初から嫌になりそうな難しい言葉ですね。

 

 イメージしやすいように言い表すと、これは

「行政の活動に関して、法がどんな時に必要となるか?」

を定義したモノになります。

 

 一番わかりやすいモノを説明しましょう。

 一番分かりやすいのは

【全部留保】

だと思います。

 

「法がどんな時に必要か?」

と言う場面で

【全部留保】

 

どうでしょうか?

 

 言葉のまんまです。

「行政が行うこと全てにおいて、法を必要とする」

と言う意味です。

 

 役所(行政)が行うことなら、物品を買う行動も、市民に教示をすることも、広報をすることも、書類を作ることも、全てにおいて法が必要と言う概念ですね。

 

 ちなみに、日本は全部留保が主流ではありません。

 他の侵害留保と言うモノが主流ですので、実際は文房具を買うための法律なんてモノはありませんのでご安心下さい。

 

 

<行政主体>

【国、都道府県、市区町村】

 これらを呼ぶ時の便利な言葉ですね。

 

 全てをまとめて行政主体と使っても良いですし、各都道府県を呼ぶ時に行政主体と使ってもオッケーです。

 行政法を学ぶ上では何気に便利な言葉ですし、頻出な重要語ですので覚えておきましょう。

 

 

<行政機関>

 行政主体のために働く機関のことです。

 

 行政主体自体に実体はありませんので、それを維持・運営する実体のある機関が必要なんですよね。

 

 例えば、東京都と言う定義はありますが、東京都と言う物体はありません。

 そこで、東京都の代表者である都知事、警視庁職員、都議会議員等々、実体のある人が東京都を運営します。

 それが行政機関です。

 

 なお、行政組織法と言う法律の定義とは別ですので、行政組織法を学ぶ人は混同しないように注意が必要です。

 

 

<法律行為的行政行為>

 行政法は難しい言葉ばかりですね。

 でも頑張って付いてきて下さいね。

 

 これは、行政の行為から法律的な効果が発生することです。

 

 つまり、行政が何かしたら、それが法的な性格を有するってイメージですね。

 代表的なモノに許可・特許・認可があります。

 

 これまた、とても混同してしまいそうな似た言葉シリーズですね。

 

 しかもそれぞれの定義がややこしい表現なので、これをそのまま言うと嫌になると思います。

 そのため、またイメージしやすいように言い換えます。

 

<許可>

 許可は、本来はダメなことを許す行為です。

 

 免許や資格をイメージして下さい。

 運転免許を持っていれば車の運転が許可されますよね。

 このようなモノが許可です。

 

 

<特許>

 特許は、新たな権利を特別に設定して許す行為です。

 

 新しいモノを創設して先駆者みたいなモノですよね。

「工夫から新たな技法を作り上げて特許を取る!」

なんて使われますよね。

 

 特許を取るとは、国に新たなこととしてそれを独占する権利として特別に許して貰うと言うことですからね。

 そんなイメージです。

 

 ただし行政書士試験を受験する人はこのイメージではダメです。

 試験問題を解く場合は、大規模な許可ってイメージの方が無難です。

 

 具体例としては、海や川の埋め立て許可、電気事業開始の許可、ガス事業の開始の許可等々は特許です。

 

 全部規模が大きいですよね。

 こんな覚え方の方が問題は解けると思います。

 

 

<認可>

 認可は、公的な機関が認めることです。

 キチンとしたことを言い出すとこれが一番イメージしにくく混乱するモノですので、これだけで終えておきます。

 

 そのため、認可を受けなくても行うことは可能となっています。

 認可保育園、認可外保育園。

 指定教習所、未指定教習所

なんてありますよね。

 これらはこの認可です。

 

 

3、行政行為の効力

 これも行政法理論なのですが、行政法特有のモノで、物凄く重要なことなので大項目として書きます。

 

 役所等の行政が行う行為には、一般の組織が行う行為とは違った特別な効力があります。

 その説明です。

 行政書士試験では必須中の必須知識です。

 

 

<公定力>

 行政行為に取り消すべき大きな欠陥があったとしても、正当な権限を有する機関によって正式に取り消されるまでは有効な行為として取り扱う効力。

 

 役所の行為で

「なんだよそれ」

と思うような不当な行為だったとしても、裁判とか、国が

「それは不当だから取り消しなさい!」

と正式に取り消すまでは従わなければならないと言うことですね。

 

 

<不可争力>

 行政行為に取り消すべき大きな欠陥があったとしても、一定期間を経過すると市民からは争う事が出来なくなる効力。

 

 行政に対して不服を申し立てる事が出来ます。

 しかし、不服を申し立てることが可能な期間が設定されています。

 この期間を超えたら、もう不服を申告できませんよ。

と言うようなことです。

 

 ちなみにこれは、

【市民からは】

なので、内部的に

「これ変じゃない?変えません?」

と言うことは可能です。

 

 

<不可変更力>

 裁決等について、行政自ら判断を覆せなくなる効力。

 

 要は、一度自分達で正式に決定したことを後から

「やっぱり止めましょう!」

とすることは勝手に出来なくなると言うことです。

 

 要は自分達で決定したことにはキチンと責任を持てってことですよね。

 

 

<執行力>

 行政が裁判所の力を借りることなく、自らの判断で強制行為を行える効力。

 

 警察官の職務質問に対して何でもかんでも

「令状を持ってこい」

と言う人がいますが、行政機関は必ずしも令状等の司法(裁判所)の力を借りなくても強制的なことが可能となっているんですね。

 

 強制権限のイメージとしては職務質問について書いているのでそちらをお読みください。

 

www.policefuta.work

 

 

<その他>

 行政法の理論だけでもまだまだあります。

 今回私が紹介した理論はほんの一部です。

 しかし、膨大な量になってしまうので、本記事ではこのくらいにしたいと思います。

 

 

4、行政法の核となる主要法

 行政法は2000個にも及ぶと言いましたが、主要な法はそこまで多くありません。

 そこで主要となる、本質的な位置付けにある行政法を独断と偏見で抜粋し、簡単に紹介しますので、行政法に興味のある貴方は参考にして下さい。

 

<行政手続法>

 違法・不当な行政活動を未然に防ぐために、行政の手続きを法で取り決めたのが行政手続法です。

 

 行政の手続きを法で取り決めることで、公正の確保、透明性の向上を図り、国民の権利を守ることが目的の法律になります。

 

 

<行政不服審査法>

 行政が行う違法・不要な行為に対して簡易迅速に不服を申し立てるための制度を定めた法律になります。

 

 ここでの不服とは

【苦情】

と言う意味ではありません。

 

 ここでの不服とは、審議をし直させたり、取り消させたりするための、行政に対して行動を伴わせるための法手続きになります。

 

 

<行政事件訴訟法>

 行政が行う違法な行為に対して裁判を起こすための法律です。

 

 裁判なので違法な行為限定で、不当な行為は訴えられません。

 不服審査に似ていますが、少し違います。

 

 不服審査は簡易迅速に行うために、再度判断する機関は行政でした。

 しかし、行政事件訴訟法で動くのは裁判所です。

 

 裁判なので簡易迅速には行えません。

 時間は掛かりますが、中立・公平、細かく適切に行えます。

 更に判決には強制力が生じます。

 

 民事訴訟法や、刑事訴訟法の行政版と言った感じですね。

 

 

<国家賠償法>

 公務員の不法行為等によって損害を受けた場合の責任追及の法律です。

 

 行政法なのですが、損害を賠償してもらうための裁判なので、裁判の種類は民事訴訟となっています。

 ちょっとややこしいですね。

 

 一般的に

【公務員個人を訴える事は出来ない】

と言われるのは、この法律から来ていますね。

 

 

<地方自治法>

 都道府県、市区町村等をひとくくりに地方公共団体と呼びます。

 この地方公共団体の運営に関する法律が地方自治法です。

 

 地方分権政策から特に重要になってきている法律ですね。

 地域に根付いた、能動的な公共団体の健全な発展を目的としています。

 

 国の運営とは結構違う部分がありますね。

 しかし、地方自治法に関しては、国の形を知ってから学んだ方が良いと思います。

 

 国と地方公共団体との関わりも重要な要素となるため、対比させて見ないと理解出来ない部分も多いので。

 

 余談ですが、一時期、都議会で舛添要一元都知事に対して100条委員会の設置がどうこう騒がれました。

 

 これは地方自治法第100条に基づく委員会の設置と言うことで、通称100条委員会と呼ばれます。

 

 

<行政機関個人情報保護法>

 何でもかんでも

「個人情報保護法違反」

なんて叫ぶ方がいらっしゃいますが、個人情報保護法は一定の民間機関に対して個人情報の取り扱いについての指針や規制を行った法律です。

 

 そのため、行政機関にそのまま適用は出来ません。

 そもそも行政機関と民間機関とでは個人情報の取り扱い方から、取得方法まで全く違います。

 

 そのため、行政機関個人情報保護法は、行政版の個人情報保護法と思って下さい。

 

 もっとも、個人情報保護法と似通っている部分がかなり多く対比も必要なため、個人情報保護法から学んだ方が良いと個人的には思いますが。

 

 

5、最後に

 行政法は行政から市民を守るために作られています。

 

「行政に権限等を与えている」

と勘違いしている人もいますが逆なんですね。

 

 法律で行政の権限等を取り決めておくことで、それ以上の暴走をさせないために存在しているんです。

 

 だから権限を与えるために行政法があるのではなく、権限を抑止するために行政法があるんですね。

 

 だから、対行政のためには行政法を学ぶ意義があるわけですね。

「私は公務員になる気はないから行政法なんて勉強する意味無い」

ではないんですね。

 

 行政法は、公務員にならないからこそ、公務員から不当・違法なことをされないために必須な知識なんですね。

 

 

 他の法律にも興味をもられた貴方はこちらからどうぞ。

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