職質の違法判決の説明。【トイレに行かせない!】
- 1、職質の違法判決【トイレに行かせない】
- 2、職質は強制権限
- 3、職質の中で任意とされている部分
- 4、本件判決への世間の反応
- 5、本職質の違法判例は妥当
- <違法な手段により入手した証拠>
- <違法な職質>
- <無罪になった理由>
- <緊急性が高くない>
- <まとめ>
- 6、最後に
- 【記事の紹介・拡散について】
1、職質の違法判決【トイレに行かせない】
【職質でトイレに行かせず違法。覚醒剤使用で起訴の男性無罪判決】
ヤフーニュースで、既に記事が削除されているのでリンクを切っています。
そのため簡単に概要を説明します。
◎ 警察はゲームセンター内で覚せい剤使用の疑いが高い男性を職質
◎ その男性は終始
「トイレに行きたい」
と訴えかけていた。
◎ 警察は
「証拠隠滅の疑いがある」
として進路を塞ぎトイレに行かせなかった。
◎ 男性は本当にトイレを我慢しており、公衆の面前で排便してしまう。
◎ 男性は覚醒剤を所持しており、使用の陽性反応も出て逮捕・起訴。
◎ さいたま地裁において、
「これは違法な職質だから職質に伴って得た証拠は認めない。そして職質に伴って得た証拠を基に起訴されているから、実質的に証拠がない状態なので無罪!」
2、職質は強制権限
まず新たな職質の違法判決について説明する前に、その大前提として私の職質に関する解釈を知っておいて下さい。
私は職質自体は強制権限によるものであり、拒否はできないと解釈している人です。
「職質が何故強制なのか?」
の詳細に興味がある人はこちらを併せてお読み下さい。
3、職質の中で任意とされている部分
読んでいただいた前提で話を進める部分もありますのでご了承下さい。
私の法解釈としての職質は、職質自体は強制ですが、職質に伴う行為の一部は任意としています。
その根拠が
警職法第2条3項 職質に伴う任意同行と答弁は強制されない。
と言う部分です。
今回の判例を理解するためにはとても重要な部分です。
4、本件判決への世間の反応
世間と言うか、ネットの反応ですが、
「実際覚醒剤を持っていたなら職質は問題ないのでは?」
「市民感覚とズレすぎている」
「裁判官辞めれば」
「無罪は有り得ない」
「なんでその判決になるの?」
等々。
普段から
「職質は任意だろう!ふざけんな!くそ警察!」
なんて言っている人達が多いので、てっきり
「だから警察はダメなんだよ」
「警察の職質は本当にしつこいからなぁ」
みたいな意見が多いかと思っていましたが、逆でしたね。
今回は無罪を出した裁判官批判をしているようです。
では、ここから本題の本件判例に関する私の見解を進めていきます!
5、本職質の違法判例は妥当
私は本件の無罪判決は妥当だと思います。
<違法な手段により入手した証拠>
法律上、違法な手段によって得た証拠は、証拠として採用されません。
そうしないと、捜査と言う名目さえあれば、違法なやり方で何でもかんでも許されることになってしまいます。
極端な事を言えば、職質段階で拷問だろうと拳銃で脅そうと、対象者の親族を人質に取ろうと何でもありになり得ます。
そうなってしまっては人権や秩序なんて崩壊し得ます。
そのため、この部分はブレてはいけないと思います。
「証拠の入手方法が違法だとしても、結果として犯罪者だったんでしょ?なら罪に問えば良いじゃん」
なんて短絡的で単純な問題ではないんですね。
<違法な職質>
「職質は強制と考えるなら、なんで違法なの?」
と疑問に思う人もいると思います。
それは、今回のケースに関しては、
【任意とされている部分を強制していると考えられるから】
です。
私の記事を読んで、職質の強制と任意部分について理解していただけるとありがたいのですが、私が言っているのは
◎ 職質そのものは強制
◎ 職質に伴って行われる任意同行と答弁は任意
と言うことです。
簡単に言うと
「逃げちゃダメだけど、質問にどう答えるかはご自由にどうぞ!」
ってことですね。
本件の職質は
「トイレに行きたい」
と言う生理現象を限界まで我慢させています。
つまり
「トイレに行きたければとっとと質問に答えろ!」
と言う状態です。
これは実質的に答弁を強制していますよね?
職質自体は法的に強制でも、法的に答弁は強制されないハズなのに、本件は答弁を強制しています。
これは明らかに違法ですよね?
結果として覚醒剤を所持しており、使用もしていたから無罪に批判が出ていますが、もしもこれが何にもなかったらどうですか?
何もない普通の人がトイレに行かせてもらえず、公衆の面前で排便させられたら。
それでもこの職質は違法ではないと主張できますか?
今回の判決はそう言うことです。
今回の職質が違法と判断されなければ、明日からそのようなことがまかり通り得る状態だったんですよ。
<無罪になった理由>
それでも
「職質が違法だったとしても、でも犯罪者だと言う証拠はあるんだし」
と感情で納得出来ないんですよね。
そこには少し誤解があるかもしれません。
今回の件に関しては、
【職質が違法だったから無罪】
なのではないと思います。
そうではなく、
【違法な手段で得た証拠しか存在しないから無罪】
なんだと思います。
つまり、他にも職質に関係ない部分で得た証拠があれば無罪にはなっていなかったかもしれません。
あくまでも
「違法な職質によって得た証拠を、証拠として採用するわけにはいかない」
と言っているだけですので。
<緊急性が高くない>
本件では
「緊急性も高くない」
と判断しています。
これに対して
「トイレに行かれたら証拠隠滅されるじゃん」
との意見の対立があります。
しかし、今回の件については私も裁判官寄りです。
トイレに行かせたからと言って、何の証拠を隠滅されるんでしょうか?
尿を出されてしまうことですか?
それなら次の排尿を待てば良いだけですし、何なら令状をとって膀胱から強制採尿も可能です。
別に一回の排尿で覚せい剤成分が全部排出されるわけではないんですからね。
パケや注射器等を捨てられる心配があるなら、トイレに着いて行けば良いだけです。
個室に入ろうとするなら、トイレに入る前の状況を写真撮影等して残しておけば良いだけです。
トイレに流されてしまうリスクに関しては、運次第な部分もあるかもしれません。
パケに空気が入っていれば流れませんし、注射器も流れるかどうかは微妙です。
もし流れてしまった場合は、排便を監視する必要があるかどうかの法的判断が必要になってくる問題になると思います。
【益の比較衡量】
と言うやつですね。
記事からは読み取れませんが、状況等から推測すると本件に関しては、覚醒剤使用の疑いで職質していると思います。
そのため、トイレに行かせ流されてしまったとしても、どちらにしても覚醒剤使用の疑いで検挙できるような状況だったと推測できます。
それなら別に流されてしまうリスクに緊急性はそこまでないように思います。
今持っているモノを流されたところで検挙出来る可能性は最初からあるわけですし、そもそも職質は使用疑いで、所持疑いではないでしょうからね。
ここは推測ですけど。
<まとめ>
◎ 違法な手段によって入手した証拠は、人権・社会秩序を保護するレベルの問題で採用は出来ない。
◎ 職質で強制してはいけない部分を強制してしまっているので違法な職質
◎ 違法な職質による証拠しか存在しないので無罪
要はこのようなことかと思います。
6、最後に
「市民感覚とズレている」
の意見に関しては、市民側に最低限の知識がないから生じるモノだと思います。
裁判官とは、法や裁判に関する知識量や経験値の次元が違うのですから、見据えている部分や視野が全く違って当然です。
そのため、ズレることがあっても、それはむしろ当たり前な事だと思います。
法の場で、感情により物事を判断するのを
【裸の価値判断】
と言います。
簡単に言うと、いわゆる感情論ですね。
法も感情論を完全に無視してはいけないと思います。
だから裁判員制度が導入されたんですよね。
しかし、取り入れ過ぎはもっと危険です。
極端な話、演技が上手な人とか、容姿が整っている人の方が優遇される裁判になり得ると言うことですからね。
要はこのズレの意見は
「市民側も判例をキチンと理解したり、裁判官の考えを理解するような努力をしたのか?」
と言うことですね。
最低限のこともしないで
「ズレている」
では話にならないですよね。
努力をして、キチンと理解して上で、それでも
「ズレている」
ならわかります。
裁判官と同じフィールドにいる法の専門家である検察官や弁護士同士でも意見や解釈は分かれて対立します。
それだけの努力後に
「市民感覚とズレているぞ!」
なら納得出来ますよね。
最後に重要なことを一つ。
私は法律の素人ですので、あしからず。
他の警察の捜査に関する裁判例にも興味を持った貴方はこちらをどうぞ
【記事の紹介・拡散について】
友人やネットの掲示板等に記事を紹介してくれる方がいらっしゃるようです。
本記事は無断でも紹介可な記事です。
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これからも宜しくお願いします。