元警察本部警察官が教えます!

元警察本部警察官の管理人が警察についてあれこれ書いています。他にも法律、裁判、福祉等についても少々!

警察官の職務質問はどのように教育されているのか実態を教えます。

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はじめに

 どのように教育されているかの大筋は日本全国共通だと思いますが、細かいコツ等の部分は教えている担当の教官によって違ってくる可能性があります。

 

 本記事はあくまでも私が現職時代に受けた教育の話ですので、あらかじめご了承下さい。

 

1、職務質問

 まず初めに

「職務質問とは?」

を簡単に説明します。

 

 職務質問とは、警察官職務執行法第2条に規定されている即時強制権限の一つです。

 どんな権限かと言うと、

 その挙動等から

◎、何かの犯罪を犯している可能性がある者。

◎、何かの犯罪を犯そうとしている可能性がある者。

◎、何かの犯罪について知っていると思われる者。

◎、行われようとしている何かの犯罪について知っていると思われる者。

に対して、停止させ、質問をすることが出来る権限です。

 

 職務質問の任意性等の法的な詳しい事に興味がある貴方はこちらの記事をお読みください。

 

www.policefuta.work

 

 

2、職務質問を教えている場所

 職務質問は警察官としての知識やスキルを身に付けるための訓練施設である警察学校で習います。

(警察学校は学校ではなく、訓練施設ですので卒業すると学歴ではなく職歴になります)

 

 職務質問は警察官の中でも特に、交番、パトカー勤務の警察官が必要とするスキルになります。

 

 そのため、授業は

【警察実務:地域】

の授業で教わることになります。

 

 

3、敬礼

 先程私は

「職務質問は即時強制と言う強制権限」

と言う趣旨のことを言いました。

 

 しかし、実は現職の警察官の大半も世間で噂されている

「職務質問は(全て)任意」

このように思っています。

 

 私も行政各法を法律家の勉強として学ぶまではそのように思っていました。

 そのため、警察学校でも任意行為として、市民に協力をしていただく行為として教わります。

 

 教官も異動でたまたま警察学校にいるだけで、法律についての特別な教育を受けているわけではありませんので。

 

 更に、いくら強制権限だと言う前提で教育されるとしても、市民からの協力の上に警察活動が成り立っていることに変わりはありません。

 

 そのため、権限の強さに関わらず、警察学校では

【敬礼に始まり、敬礼に終わる】

このように教わります。

 

 

4、言葉遣い

 前項でも言いましたが、警察活動は市民の協力の上に成り立っています。

 そのため、言葉遣いは当然、敬語で行うように教育されています。

 

 警察学校では、職務質問は敬語で、丁寧な言葉遣いで行うように教育されているんです。

 

 前項と本項で今まで職務質問を受けたことのある人は、

「おい、ちょっと待て!」

と言いたいかもしれません。

 

 その気持ちは分かります。

 その部分についても書きますので、最後までお付き合い下さい。

 

 

5、態度

 ここまで来れば、これはもう言う必要もないですね。

 警察活動は市民の協力の上に・・・云々

です。

 

 そのため、警察学校ではこれも当然相手に失礼のないような態度をするように教育されています。

 

 

6、任意同行

 職務質問に付随する行為として任意同行をすることが認められています。

 

 警察官職務執行法第2条2項に書かれており、その目的はその場で職務質問を行うことで、

◎、職務質問を受けている者が不利になる可能性がある時

(街行く人の目に晒されてしまう等)

◎、交通の妨害になる時

に警察機関に移動して良いと言う趣旨のモノです。

 

 そのため法的に職務質問での任意同行は、警察官に有利にするためのモノではなく、職務質問を受けている者の人権保護のためなんですね。

 

 では、警察学校での教育上はどうか?

 これは残念ながら法律通りではなく、世間に思われている通りの理由で教わります。

 

 つまり、警察官に有利なフィールドで怪しい部分を追及するために警察機関に引き込むと言う形ですね。

 

 そのため、あまりにゴネる対象者は

「いかに任意同行をするか?」

が最初の壁になりガチです。

 

 

7、教育の通りにならない理由

<教育内容を知って違和感>

 ここまで見て来て

「おい、待て!」

と思った人は多かったと思います。

 

 職務質問を受けたことがない人は意味が分からないと思いますが、何故本記事をここまで見てきた人の多くが

「おい、待て!」

と待ったを掛けたくなるのか?

 

 それは、教育内容と実際に行われている職務質問のやり方に大きな違いがあるからです。

 

◎、敬礼に始まり、敬礼に終わる。

◎、終始敬語で行う。

◎、丁寧な態度で行う。

 このような職務質問を行っている警察官がどれだけいるのか?

 私の目から見ても、ハッキリ言ってほとんどいません。

 

 

<実情>

 敬礼なんて一度もしない。

 

 最初から

「そこのあんたちょっといい?止まって」

「今何やってんの?」

のような言葉遣い。

 

 最初から腕組みしていたり、手に持っているノートで人を指したり、指図するような態度。

 

 実情は、教育機関の警察学校で指導されてきた内容と全然違うことをしているんですね。

 

 一部の警察官が警察学校の教育と違うことをしているなら、その警察官が悪い態度だっただけと思えるかもしれません。

 

 しかし、多くの警察官を内部から知っている

【私が知る限り】

教育通りの職務質問をしている警察官は極少数なのですから、これは一部の警察官だけじゃないんですね。

 

 

<教育と実情が全く違う理由>

 その本当の理由はわかりませんが、私が個人的に勝手に考えている理由はあります。

 

 それは、現場で

【職務質問のプロ】

と誉め称えられ、実地で地域課の警察官に職務質問を指導している警察官に原因があると考えています。

 

 実地指導員の多くは警察本部地域部自動車警ら隊所属の警察官です。

 私が知る限りの自動車警ら隊出身の警察官の態度や言葉遣いはとても悪いです。

 

 そして彼らの職務質問のやり方がまさに敬礼をしない、敬語を使わない、悪態なんですね。

 

 

<基本的な考え方>

 何度も言いますが、私が知る限りの範囲の話です。

 

 その上で、警察学校での教育の基本になる考え方は

【警察活動は市民の協力の上に成り立っている】

です。

 

 一方の自動車警ら隊は

【市民は協力者だろうと何だろうと追い込んで、追い込んで検挙する対象】

です。

 

 根本的な考え方からほぼ真逆なのですから、教育と実情に大きな解離が生まれるのも納得できますよね。

 

 

<反発した私の話>

 余談ですが、私はそのように指導してきた自動車警ら隊出身の先輩・上司連中の考えを真っ向否定した一人です。

 

「警察の活動は市民協力の上に成り立っており、それを意識して仕事をしていれば警察に対して好意的に協力して下さる方々は増える。敬語や丁寧な態度で接していても犯人を職務質問で捕まえる事はできるし、その方が市民のためにも、警察のためにもなる。」

と主張して、地域課ではとても差別的扱いをされたものです。

 

 その差別的扱いの内容に興味があればどうぞ。

 

www.policefuta.work

 

 

8、最後に

 敬礼に始まり、敬礼に終わる。

 敬語を使う。

 丁寧な態度で接する。

 

 職務質問でこれらを行うことは、現職警察官から言わせると机上の理論と言われるかもしれません。

 

 しかし、私からはそのように行うことへの努力を放棄しているだけにしか見えません。

 

「そのような方向性の努力もしないで何が警察官だ?怠け者が!警察学校で【努力すること】とは何だと教わってきた?」

とさえ思います。

 

 私のこのような方向性の考え方は私の警察経験上、内部に理解してもらえた人物は1名しかいませんでしたので、異端中の異端なんだと思います。

 

 その人物とは退職後に面談したのですが、その人は

「警察組織内でそのようなことを言葉には出来ない」

と言っていました。

 

 彼のためにもどの部署の人かとか、何故退職後に彼と面談したのか等は言えません。

 

 この記事を読んでいる貴方は、市民なのか、現職警察官なのか、元警察官なのかわかりませんが、

【警察活動は市民の協力の上に成り立っている】

【市民は検挙の対象以外の何者でもない】

どちらの思考が健全で、警察のあるべき方向性なんでしょうね?

 

 

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